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コラム 2022 / 09 / 13

我が国における原子力発電設備廃止措置の在り方

―米国の経験から何を学ぶべきか―

2022年9月13日
一般社団法人カーボンニュートラル推進協議会 理事
京都大学大学院 総合生存学館 教授 長山浩章

キーワード:廃止措置、原子力発電、倒産隔離

 2022年7月27日(第1回)及び8月31日(第2回)の経済産業省資源エネルギー庁の廃炉等円滑化ワーキンググループ(以下WG)で、廃炉費用の外部化について新たな方向性が打ち出された。廃炉等円滑化WGの設置については、2022年6月30日の総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会において発表された。この背景には、1)電力システム改革により競争が進展した環境下においても、原子力の諸課題に対応できるよう、事業環境の在り方を検討していく必要があり、第6次エネルギー基本計画においても、「バックエン ドも含めた安定的な事業環境の確立に向けて、必要な対応に取り組む」こととされている。2)バックエンドの中でも、とりわけ廃炉については、2020年代半ば以降、国内の原子炉の廃止措置プロセスが本格化することも踏まえ、廃止措置を着実に実施していくための課題と対応策について、 引き続き整理を進める必要があること。3)以上を踏まえ、通常炉の廃止措置を効率的かつ円滑に実施し、完遂するための課題を更に整理し、課題解決に必要な事業体制や資金確保の在り方等を検討する必要があることとされ、原子力小委員会の下に設置された。本WGは第3回(日程は2022年9月15日現在未公表)で中間整理をまとめる予定とされている。
 世間の関心は高レベル放射性廃棄物の地層処分の最終処分場として北海道寿都町が国の文献調査の対象地の1つになったことや、福島第一原子力発電所の廃炉にあるが、もう1つの重要な問題は日本の通常の原発の廃止措置のあり方にある。特に今回、廃止措置費用については方向性が定まったが、廃止措置の必須要件である低レベル放射性廃棄物[1]の処分場の問題は依然、緊急の課題として残っている。
 通常炉の廃止措置を迅速に進めることは、現在岸田政権が進めようとしている次世代革新炉の設置を迅速に進める上でも重要な取り組みとなる。
 現在日本では高レベル放射性廃棄物の最終処分にかかわる処分費用は電力会社が原子力環境整備促進・資金管理センターに拠出し、原子力発電環境整備機構(NUMO)が取り崩す仕組みであり、使用済燃料の再処理費用も、電力会社が使用済燃料再処理機構(NuRO)に拠出金を支払い、日本原燃がそれを取り崩す仕組みとなっている。しかし、廃炉措置費用に関しては原子力発電施設解体引当金として電力会社社内に積み立てるのみで、倒産隔離されていなかった。現在、議論がすすめられるWGでは、積立金でなく拠出金方式で、倒産隔離と、「着実かつ効率的な廃止措置の実現」を達成しようとしている。
 本稿では米国の例を参考にしつつ、我が国における廃止措置の在り方について考察する。世界で廃止措置が終了した原子炉は15基あり、そのうち米国が12基である[2]。日本も英国も終了した実績はない。尚、廃止措置とは「発電を終えた原子力発電所から施設を解体するなどして放射性物質を取り除くこと」(電気事業連合[3])であり、原子炉に関しては一般的に廃炉と呼ばれる。本稿の廃止措置は通常炉を対象とし、福島第一原子力発電所の廃炉は対象としていない。また、放射性廃棄物は低レベル放射性廃棄物を議論対象としている。


[1] 放射性廃棄物の区分と発生
高レベル放射性廃棄物以外の放射性廃棄物を「低レベル放射性廃棄物」と呼ぶ。低レベル放射性廃棄物は、発生場所や放射能レベルによってさらにいくつかの区分に分けることができる。原子力発電の運転に伴い発生する放射性廃棄物を区分別にまとめると次の表のようになる。
なお、低レベル放射性廃棄物については、発生社責任の原則の下、原子力事業者等が処分場所の確保などの取組を進めることを基本としている。
出所:資源エネルギー庁「放射性廃棄物について>低レベル放射性廃棄物」、https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/gaiyo/gaiyo01.html(2022年9月11日閲覧)
[2] NEAのWilliam D Magwoodによると「世界中で閉鎖された約160基の原子炉のうち、完全に廃止され、グリーンフィールドの状態に戻されたのは15基だけ」であり、そのうち「2012年以降、米国では12基の原子炉が永久に閉鎖されており、最新のものは2021年4月30日のインディアンポイント3である」となっている。
出所:American Nuclear Society (Oct 2016) “Nuclear News: Applying lessons learned and remote-operated systems to D&D”,
https://www.ans.org/pubs/magazines/download/article-1035/ および Congressional Research Service (June 10, 2021) “U.S. Nuclear Plant Shutdowns, State Interventions, and Policy Concerns”, https://crsreports.congress.gov/product/pdf/R/R46820/3
[3] 電気事業連合会「原子力発電所の廃止措置-原子力発電について」、https://www.fepc.or.jp/nuclear/haishisochi/index.html (2022年9月11日閲覧)

1. 我が国において新たに打ち出された廃止措置の方向性
 基本的な方向性として、概要(抜粋)は以下のようである(全体像は図1)[4]
・個別の原子炉の廃止措置については、国内のサイト・炉ごとの多様性も踏まえ、原子炉等規制法に基づき、原子炉設置者が責任をもってこれを行う体制を維持する。
・一方で、国全体での着実かつ効率的な廃止措置を実現するためには、共通する知見・ノウハウを蓄積した上で、我が国の廃止措置全体を総合的にマネジメント(蓄積した知見・ノウハウに基づく事業者に対する指導・助言等)し、計画的・効率的な廃止措置を実現し、安全かつ効率的な廃止措置に向けた研究開発、地域理解の増進を行う。
・さらには廃止措置に必要な資金の確保及び支弁等の事業を実施するための民間認可法人を設置する。
・原子力事業者[5]は、同法人の運営に必要な資金を拠出金として納付する。但し、原子力事業者が認可法人に納付する拠出金は、事業者の経営悪化のリスク等も踏まえつつ、各社の経営状況等にも一定の配慮をする。
・廃止措置に必要な資金を確実に確保するため、各原子力事業者が個別に内部引き当てを行う現行制度を改め、新たな認可法人が必要な資金を確保・管理・支弁する仕組みとするため、これまでの内部引き当て分は新たな認可法人に移管することになる。新たな認可法人への拠出金は、我が国全体の廃止措置に必要な資金に加えて、共通する課題(研究開発等)に対応するための費用も含めて支払うことを義務付けることとなる。

図 1 原子力事業者と新たな主体の役割分担
出所:資源エネルギー庁(2022年8月31日)「円滑かつ着実な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」、廃炉等円滑化ワーキンググループ、第2回 資料5 スライド20-21を統合

・認可法人が安定的に十分な資金を確保するためには、競争環境下において、万が一、原子力事業者が破綻した場合においても、納付された資金が確実に確保されている仕組みとする必要があり、仮に事業者が破綻したとしても債権回収の対象とならないよう、単なる外部積立ではなく、拠出金制度とする。
・新規認可法人自らが資金調達や資金運用を行うことも可能とし、新規認可法人もしくは原子力事業者が予見しがたい事由により、事業の継続が困難な状況に陥った場合においても、我が国における廃止措置を着実に進めるためには、このような場合には、国が必要な措置を講じるようにする。

 尚、この新たな主体は、使用済燃料処理機構[6](The Nuclear Reprocessing Organization of Japan[2]、以下NuRO)に業務追加となる可能性が高く、国の適切な関与・監督が及ぶものとする。このNuROは現行の業務と区分をした上で、事業計画の認可、事業を全うするための自由な解散の制限、国による監督・命令など、必要な関与・監督が及ぶこととするようである。

 他方、米国は積立金制度であり、電力会社は連邦規則集CFR(Code of Federal Regulation)でエネルギーをカバーする第10巻の10 CFR(Code of Federal Regulation)に記載される一定の式(Formula)に基づいて積み立てを行い、これを米国原子力規制委員会Nuclear Regulatory Commission(以下、NRC)が監督する。費用の払い出しについては各サイトの廃止措置責任者が廃止措置費用の使用を決定する。この段階でNRC(規制機関)は関与せず、事後的に支出において法律にそぐわない点があった場合は事業者が罰せられる仕組みである。
 WGでは、拠出金制度の方向で議論がすすめられているが、積立金制度の場合は、将来廃止措置費用が上振れして一括で費用処理した場合に損金として認識しければならないことと、業者が破綻した時に資金管理主体に取り戻し請求権が及ぶことを避けるためであると思われる。
 2015年度末時点での原子力発電設備解体引当金の総見積額は、引当完了済の東海、浜岡1・2、及び事故炉の福島第一発電所の1〜4号機を除いて2.9兆円[7]との金額が出ている[8]が、工程遅れや工数増加などで上振れするリスクも考えられる。

表 1 原子力発電設備解体金の総見積額

注:2015年当時、既に廃止措置になっていた東海及び浜岡1・2号は引当完了済のため本表からは除外される。福島第一の1〜4号も事故後に廃止手続きを行い引当金を基金参入したため除外している。
出所:資源エネルギー庁(2016年10月19日)「自由化の下での廃炉に関する会計制度について」、財務会計ワーキンググループ、第2回 資料4

図 2 積立金制度と拠出金制度の比較
注:(筆者注)米国では積立金制度の「仮に事業者が破綻した場合には、事業者の有する取戻請求権が債権回収の対象となるおそれ」はない。
出所:資源エネルギー庁(2022年8月31日)「円滑かつ着実な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」、廃炉等円滑化ワーキンググループ、第2回 資料5

 積立金制度と拠出金制度の会計上の処理の比較を行う。現在、廃炉等円滑化ワーキングでの議論を踏まえて、関係者で制度の詳細が検討されていると想像するが、その責任範囲は、どの拠出金制度をとるかによって、電力会社へのインパクトは大きく異なってくることになる。
 まず、積立金制度は、廃炉のための資金が資金管理主体にプールされる。なお、当該主体が運用する必要も生じる。但し、事業者が破綻した時に資金管理主体に取り戻し請求権が及ぶ。
 次に、拠出金制度であるが、確定債務(類型1)、確定給付(類型2)、出資方式(類型3)なのか、補助金方式(類型4)が考えられ、各々の類型によって会計上の処理も異なる。拠出時の関係は現段階、WGで議論中と思われるが、拠出分が費用なのか(倒産隔離可能)、資産(預け金や出資金)なのか(この場合、倒産隔離は難しい)で異なる。拠出金についてもし、全額電力会社が自由に使えるならば、それは電力会社の資産となり、倒産隔離は難しくなると思われる。
 類型1(確定債務方式)は資金管理主体が廃炉を担当し、電力会社は一度払えば取引関係は終了するものである。この類型では倒産隔離も達成される。また、この場合、資金管理主体が解体作業の主体となると想定される。解体時に追加コストが生じる可能性がある。
 類型2(確定給付方式)は電力会社からの資金で資金管理主体が廃炉を担当する。資金管理主体に資金プールされる。電力会社による廃炉対応資金の給付が決まっているので、最初の拠出時だけではなく、決算など一定期間ごとに廃炉費用の見直しにより追加拠出が生じる可能性がある。例えば、新認可法人が資金不足を起こした場合、電力会社による追加拠出の可能性があり、電力会社が不安定な状況になるか、もしくは第三者か国家予算が使われるようになる。なお、拠出金や対応する預り金などについては、税務上の取扱いに留意する必要があると思われる。
 類型1と類型2との違いは、電力会社の負担額(債務)を先に決めるのが確定債務(廃炉費用の負担が電力会社にとって確定的なのか(不足分を資金管理団体が補填してくれる)のかただし、費用内で廃炉が完遂できるかは別))で類型1、電力会社の負担を先に決めるので確定給付((不足分は自分で調達する。)ただし、資金が間に合うかは別)で類型2となる。
 類型3(出資方式)は、電力会社は資金管理主体への出資者であり、資金管理主体が廃炉を担当するので、当該主体に資金プールはされるし、倒産隔離になる。資金管理主体が手持ちの資金で廃炉できない場合、追加出資を電力会社ないし第三者か国家予算に依頼することになる。ただ、資金管理主体の財政状態が悪化すると電力会社の出資金の評価を下げることになる。
 類型4(補助金方式:資金管理団体からの取り戻し分を補助金と定義)は、電力会社は一時的に資金を資金管理主体に預けるが、廃炉事業の主体となり、解体費用が電力会社に生じる。
 例えば、1.拠出時は、資金管理主体の初期運営費などのコストを負担し(例10億円)、2の解体費用は自らの現金で賄い(例さらに100億円)、3で解体費用を(例80億円)請求するが実際は4で、(例50億円)しか戻ってこないような例である。公的機関となる場合は(新認可法人は民間とされているが)、かかった費用の全額がそのまま請求されず、査定のプロセスを経る)当該廃止措置費用は資金管理主体に支弁されることから、この場合、支弁される費用の範囲や資金繰りが課題になる。他方、積立金制度と同様に、電力会社が資金管理主体に請求権を持つため、倒産隔離は達成されない可能性がある。また、電力会社で負担した解体費用と資金管理主体より査定等を受けて最終的に支弁される補助金収入とが必ずしも1対1では対応しないと思われるので、解体費用と補助金収入との相殺は考えにくい。なお、拠出金や対応する預り金、補助金などについては、税務上の取り扱いに留意する必要があると思われる。

 現在既に進められている再処理事業は上記の類型2であり、「法律に基づき各原発で使用済燃料か使用済MOX燃料が発生するたびにその量に応じた金額を電力会社が支払う」[9]とし、使用済燃料再処理機構は日本原燃に再処理等事業を委託して費用を支払うが、その時点で電力会社の会計処理には影響しないようにしている。

表 2 積立金と拠出金の類型による会計処理の違い
出所:拠出金処理の考え方は小泉正明(公認会計士)による一般的な拠出金の会計処理の考え方を参考に筆者作成 


[4] 資源エネルギー庁 廃炉等円滑化ワーキンググループ 第1回、https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/hairo_wg/001.html
および、第2回、https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/hairo_wg/002.html
[5] 原子力事業者は令和三年五月二十日施行の原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)の第二条で定義されている。概要は、放射性物質の使用・貯蔵事業、再処理事業、廃棄事業、核燃料の加工、原子力炉の運転などの事業を営む許可を受けた者。
[6] 「原子炉等規制法上、使用済燃料の管理・処分については、原子力事業者に責任がある。一方で、電力自由化などの環境変化の中でも、その再処理等を着実に実施するため、2016年に使用済燃料再処理機構(NuRO)を設置。原子力事業者に対し、発生した使用済燃料の量に応じて拠出金の支払を求めることで、再処理等事業に必要な資金を安定的に確保している。
出所:資源エネルギー庁(2022年7月27日)「円滑かつ着実な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」、廃炉等円滑化ワーキンググループ、第1回 資料5
[7] 総見積額は物価上昇に依存する。2022年からは物価上昇が急なため金額が増加する可能性がある。
[8] 資源エネルギー庁(2016年10月19日)「自由化の下での廃炉に関する会計制度について」、財務会計ワーキンググループ、第2回 資料4
[9] 資源エネルギー庁「資源エネルギー庁がお答えします!~核燃料サイクルについてよくある3つの質問」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/qa_kakucycle.html (2022年9月7日閲覧)

2. 我が国の廃止措置における問題点
 今回のWGにおいて焦点があてられているのは主に廃止措置費用の外部隔離化であり、廃止措置基金の管理・支出のあり方、廃止措置の実質的な責任分担、廃止措置を早く行うインセンティブの付与、低レベル放射性廃棄物(以下LLW)サイトの整備などの重要事項についてはいまだ議論が進められていない。日米英における廃止措置の概要と問題点は表3のようにまとめられる。

表 3 日米英における廃止措置の概要と問題点

注1:日本の基準(L3廃棄物(解体コンクリート、金属など)、L2廃棄物(原子炉圧力容器など)、L1廃棄物(制御棒、炉内構造物など))とすると、米国の基準(10 CFR part 61)では、Class A, B, Cに区分される廃棄物は浅地中処分、GTCCは連邦政府(DOE)の責任で処分とされている。日本と比較するとClass AがL3、ClassBがL2、Class CとGTCC(Greater than Class C)がL1に相当する。
GTCCは連邦政府の立地になるため、使用済燃料と同じ扱いになる。
注2:GCR=Gas Cooled Reactors、AGR=Advanced Gas Cooled Reactor、NDT=Nuclear Decommissioning Trust(廃止措置信託基金)
出所:OECD/NEA (2021) “Ensuring the Adequacy of Funding Arrangements for Decommissioning and Radioactive Waste Management” Nuclear Technology Development and Economics 2021,等より筆者作成

 今後の廃炉等円滑化ワーキンググループ(WG)では今後は以下のような点でさらに検討を行うべきと思われる。

(1)拠出金制度と中央機関の指示による廃止措置の整合性
 電力会社が拠出金として資金管理団体(新認可法人)に廃止措置費用を拠出し、廃止措置を戦略的に進めることは一定の合理性があると思われる。他方で、原子炉規制法に基づき、原子炉設置社が廃止措置の責任を持つとされ、拠出金のありかたを含め、廃止措置実施の責任を関係者間で明確にすべきである。

(2)早期廃止措置のためのインセンティブ付与
 資金はスケジュールをサポートするために利用可能でなければならず、短いスケジュールは長く引き延ばされたスケジュールよりも低コストである。米国においては、商業的に廃止措置を行う請負事業者は、年間予算・期間内で作業する政府機関よりも効率的でコストが低いことが証明されている。早期廃止措置は、地元に放射性廃棄物のリスクを残しておかないことからも米国では地元の強いニーズとなっている。

(3)LLW(低レベル放射性廃棄物)のサイト整備
 LLWの処分地の立地については米国では州政府がLLWサイトの認可を行う。立地決めはすべて事業会社が行う。バーンウェル処分地はNukem社、クライブ処分地はEnvirocare社、テキサスではWCS社が立地を担当(それぞれ当時)した。バーンウェル処分地は州政府が所有し、エナジーソリューションズ社(以下ES)が運営している。クライブ処分地はESが所有と運営を行い、テキサスのWCS処分地はWCS社が所有し運営を行う。英国はNDA傘下に2か所(ドリッグ(低レベル放射性廃棄物処分場)及びドーンレイ低レベル放射性廃棄物処分場)存在する。

(4)炉のタイプが廃止措置の体制に与える影響はない
 「個別の原子炉の廃止措置については、国内のサイト・炉ごとの多様性も踏まえ原子炉等規制法に基づき、原子炉設置者が責任をもってこれを行う体制を維持することが適切」としているが、原子炉のタイプは、廃炉の管理アプローチに影響を与えない。技術的な違いはあるが、管理アプローチへの影響は最小限である 。米国の例でも明らかなように、表4のように1つの廃止措置請負会社がPWR/BWRの双方を扱っており、炉の違いは廃止措置の効率性には関係がない。

表 4 炉のタイプ
出所:各種資料より作成

3. 米国における廃止措置体制の現状
 米国には廃止措置のオプションはDECON(即時解体)、SAFSTOR(一般に「遅延解体」とみなされる)、ENTOMBの 3 つがある[10]
 DECON(即時解体):原子力施設の閉鎖後すぐに、放射性汚染物質を含む施設、設備および施設の一部は、不動産の譲渡およびNRCライセンス終了を可能にするレベルまで除去または除染される。
 SAFSTOR(一般に「遅延解体」とみなされる):原子力施設は放射能が減衰するような状態に維持・監視され、その後、プラントは解体され、敷地は汚染除去される。すべての燃料が乾式貯蔵に移される。最大60年でプラントの廃止措置を完了する。
 ENTOMB:放射性汚染物質は、コンクリートのような構造上健全な物質で敷地内に永久に封入される。施設は、放射能が制限された放出を許可されたレベルまで減衰するまで維持され監視される。現在まで、NRCのライセンスをもつ施設は、このオプションを要求していない。
 従来はSAFSTOR が多かったが、近年はDECON(即時解体)が多い。2014年12月に運転を停止したバーモントヤンキー原子力発電所(BWR、652MW)は2019年1月、エンタジー社から廃炉専門会社のノーススター社へ、使用済燃料を含む発電所全体が資産譲渡され、同発電所の廃止措置の方法は、SAFSTORからDECONに変更された。
 放射線の廃炉プロセスは、除染と解体が始まると完了まで約7〜10年かかるとされている。
 米国においては表5にあるように廃止措置に4つのモデルがある。各モデルにより原子炉設置者の関与は大きく変わることになる。我が国の事例にあてはめると、(参考)にあるDOE(米国エネルギー省)のモデルは日本原子力研究開発機構(JAEA)によるふげんの廃止措置や、英国のNDAによるものになる。モデル2、3、4は我が国にはないが、モデル2は今回の新たなスキームの設定により展開の可能性が出てきた。
 モデル2においては廃止措置の手法も入札対象となっており、我が国においてモデル1で行われているようなあらかじめ決められた業務の下請けとは考え方が異なっている。

表 5 米国における廃止措置の運営の4つの商業モデル

注:DGC=Decommission General Contractor、SPE=Special Purpose Entity、D&D=Decommissioning and Decontamination(廃炉と除染)、ES=Energy Solutions、DPC=Dairyland Power Cooperative
出所:Energy Solutions社資料をもとに筆者作成


[10] NRC (2018) “Backgrounder on Decommissioning Nuclear Power Plants,” August 15, 2018 https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/fact-sheets/decommissioning.html

4. 米国における廃炉資金(NDT)管理と低レベル放射性廃棄物処分の歴史
 表6及び表7は廃止措置資金管理と低レベル放射性廃棄物処分を年表として整理したものである。

(1)廃止措置資金管理
 米国においては1978年から時間をかけて廃止措置資金の外部積立化がすすめられ、積立金の決め方、NRCの関与の仕方が規定されてきた(表7)。それ以前の1960年代〜1970年代、廃炉費用は核物質などのサルベージ価値で賄うという考え方や、1980年代になって廃炉費用は負債として認識され、それから内部積立(株主資本の配分)や外部信託基金を設置する電力会社も出てきた。1978年に43 FR 10370にNRCは、廃炉プロセスに費用負担を含む、より具体的な要件を規定する新規制の検討を開始することになった。1985年にNRCが廃止措置計画及び廃止措置プロセスに関する規則案を連邦官報に発表した。平行して、米国議会では1984年、1986年に電力会社に対して廃止措置信託基金(以下、NDT)に入れた額を控除できるように内国歳入法(Internal Revenue Code)を改正した。つまり、NDTに入れなければ電力会社が1ドル得た収入に対し毎年36セント課税されるが、NDTに入れれば課税されないということになる。
 ここまでが準備で、1988年にNRCが廃炉計画及び廃炉プロセスに対応する最終規制を連邦官報に発行(53 FR 24018)。1990年7月27日までに各商業炉のライセンシーは廃炉資金を保証するための承認された方法を採用したことを証明する廃炉資金計画を提出しなければいけないことになった。1986年の物価水準でサイト固有のコスト見積もり、埋設費用、人件費、エネルギー費用の値を用いて算出されることになった。承認された財務上の保証の方法とは、Prepayment(前払い)、External Sinking Fund(外部積立)、保証(Security)、保険(Insurance)、その他の方法であったが、ほとんどの事業者はExternal Sinking Fundを採用した。
 同時にNRCは内部留保では、廃止措置の費用を支払うために必要なときに資金が利用可能であるという合理的な保証を提供しないため、廃止措置のための資金を提供する可能な方法として内部留保を排除するように修正した。
 1990年には事実上すべての原子炉のライセンシーが、原子炉の運転期間中、料金支払者の徴収金で賄われる信託基金に資金を分離するExternal sinking fund方式を採用している。
 以上のプロセスで廃炉資金の外部化が制度化された。
 NRCは、原発の運転時はNDT Formula(10 CFR 50.75 (c))に基づきNDTの積立額を決める、もしくはSite SpecificなDCE(Decommission Cost Estimate)の高い方で積み立てていればそれ以上の規制は行わないが、廃止措置の段階になるとその時点で積み立てられているNDTの残額と残りの期間で果たすべき作業の見積もりのチェックを詳細に行うことになる。こうした廃止措置資金の整備により、費用の予見性ができ、民間の廃炉専門事業者が参入した。
 尚、州規制当局によって、NDTの蓄積のスピードが異なることもあった。
 1998年、積み立て不足の場合は、サービス原価方式を採用している電気事業者は外部積立方式を継続できる。非電気事業者(「マーチャント」プラント:市場から収入を得ている)は前払い方式を採用しなければならない(63 FR 50465 (1998年9月12日)。
 NDTは退職年金の運用と同じように株式6:債券(Fixed income)4の割合で投資されている。

(2)低レベル放射性廃棄物
 低レベル放射性廃棄物は、1970年代に推進された地層処分は、the West Valley、Maxey Flats、Sheffield処分場が地表及び地下水の管理の問題に直面した。処分場からの放射線核種の予想外の漏洩と浸水の問題、表面浸食による廃棄物コンテナの地盤沈下、不適切な廃棄物コンテナの締固めによる地盤沈下、処分トレンチからの汚染された浸出水の移動等である。この結果、米国での処分場容量が大幅に減少した。さらに、1979年のBarnwellサイト(サウスカロライナ州の運営)では、サウスカロライナ州知事は廃棄物受け入れを2年で50%縮小するよう命令した[11]。Barnwellサイトでは当初、高い処理費用を徴収し、州の教育などの行政に活用してきたが、現在はコストベースになるよう検討されているようである。
  LLWPA(Low-Level Waste Policy Act of 1980)、LLWPAA(Low-Level Waste Policy Act of 1985)でもLLW処分場の開発に成功した州や協定はなかった[12]。実際に認可された新しい処分施設は、1991年のユタ州CliveにあるEnvirocare LLW 処分施設(現在はEnergy Solutions社施設)の 1つだけであり、これは LLWPAAの枠組みの外で達成された[13]。その結果、LLW処理のコストの上昇は1989年の調査の時点で20年で3倍になった[14]。商用の LLW 発生装置は、既存の処分場に依存し続けている。
 このため1991年にClive処分場が運開するまで、処分容量の不足を補うため低レベル放射性廃棄物のコンパクト化が進められた。あわせて、廃棄物の減容、廃棄物に付加価値を与えるリサイクル産業が成長し始めた。このClive処分場の運開により、今まで行われていた州・コンパクト[15]単位での廃棄物対策に限らず、全国的に低価格・大規模処分が可能となった[16]。1998年までに44の州が10の州間コンパクト協定を締結した[17]
 表6は米国における商用LLW処分施設である。
 米国内のリサイクル事業は、日本を含む海外の顧客に対しても開放されている。
 2006〜2014年、エナジーソリューション社(ES)により、国内の処分事業者、リサイクル事業者が買収され統合されていった[18]

表6 米国における過去と現在の商業用LLW処分施設

注1:
a. 実際の投棄面積は、投棄場所を構成する面積よりも小さい(括弧内)。報告された廃棄物量は、0.028317を乗じることで立方メートル単位に変換できる。
b. 1988年6月、サイト運営者である米国エコロジー社は、LLW処分場に隣接する場所で有害化学廃棄物を処分するための州・連邦合同RCRA許可を取得した(Howekamp、1996、p.3)。RCRA以前の分類の廃棄物の種類は、1970年以降、この場所で処分されていた。1978年には、同社はBeattyサイトでPCB保管・処分施設を運営するEPAの承認も得ている。
c. ニューヨーク州が所有するサイトには、複数の放射性廃棄物管理区域がある。
d. ハンフォード核施設は、1000エーカーの面積を有している。
e.リッチランド、バーンウェル、クライブの処分容量(既処分量)は2018年12月時点。
注2:DOEの責任を持つ処分場はハンフォード・サイト、サバンナリバー・サイト、ネバダ国家セキュリティサイトなどがある。
出所:表はEG &G Idaho, Inc.(1994)及び各社HPより筆者作成。WCSについては、AuditSource LLC(2000-03)「Audit Information Report: Waste Control Specialists, LLC (WCS), Andrews, Texas Facility」、https://www.nrc.gov/docs/ML0101/ML010120462.pdf 及び同社HP「Our Services, Disposal」、https://www.wcstexas.com/our-services/disposal/(2022年9月6日閲覧)より作成。リッチランド、バーンウェル、クライブの処分容量(既処分量)については、経済産業省が原子力環境整備促進・資金管理センターに委託(2020)「諸外国における放射性廃棄物関連の施設・サイトについて」より。

表7 廃止措置資金(NDT)管理と低レベル廃棄物処分の年表

出所:廃止措置資金管理については各根拠法令
・43 FR 10370 https://tile.loc.gov/storage-services/service/ll/fedreg/fr043/fr043049/fr043049.pdf
・50 FR 5600 https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-1985-02-11/pdf/FR-1985-02-11.pdf
・Internal Revenue Code Section 468A https://www.govinfo.gov/content/pkg/USCODE-2020-title26/pdf/USCODE-2020-title26-subtitleA-chap1-subchapE-partII-subpartC-sec468A.pdf 等
低レベル放射性廃棄物処分については以下
・History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State, https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf ;
・Commercial Low-Level Radioactive Waste Disposal In South Carolina, https://scdhec.gov/sites/default/files/docs/HomeAndEnvironment/Docs/commercial_low_level.pdf ;
・HEARING BEFORE THE SUBCOMMITTEE ON ENERGY OF THE COMMITTEE ON SCIENCE , SPACE , AND TECHNOLOGY U . S . HOUSE OF REPRESENTATIVES ONE HUNDRED THIRD CONGRESS MAY 27, 1993 No.43 ;
・平成30年度 廃止措置等を踏まえた国際シンポジウム 使用資料, https://www.mext.go.jp/content/1421722_2_1_1.pdf

 これまでの10 CFR(Code of Federal Regulation)は以下のようになる(表8)。
 10 CFRは廃止措置信託基金(NDT)の各種要件を規定したものであり、10 CFR 50.75は廃炉計画のリポーティングと記録で、1)財務的保証の手段、2)2年に一度廃炉資金の状況についてのNRCへの報告義務(すでに閉鎖したプラント(認可寿命の終了前)、合併または買収に関与しているプラントのライセンシーは、この報告書を毎年提出しなければならない)、3)各ライセンシーは廃止措置費用に影響を及ぼし得る主要な要因の最新の評価を含む廃止措置費用見積書を運転終了予定日の5年程度前に提出すること、4)原子炉の種類と出力レベルごとに廃炉資金の合理的な保証を示すために必要な最低金額(1986年1月ドル)の表、5)投資制限、6)基金からの払い出し条件、などを記載している。その他発電用原子炉の廃炉のための資金は、 料金規制を管轄する連邦エネルギー規制委員会(FERC)及び州公益事業委員会)の規制の対象となる場合もあること、ratemaking regulation(筆者注:従来の「Cost of Service (原価)」で規制される電力会社)には公益事業地区、市町村、地方の電気協同組合があるが直接的または間接的に、独自の料金を設定し、廃止措置に割り当てられるサービスのコストを回収できるとした。
 10 CFR 50.82はライセンスの終了で、閉鎖後廃⽌措置活動報告書(PSDAR)(Post Shutdown Decommissioning Activities Report)のNRCへの提出とパブリックコメントについて記載されている。10 CFR 72.30は財務的保証と廃炉への記録となっている。

表8 10 CFR(Code of Federal Regulation)の推移


[11] p33/212、(NUREG-1853) History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[12] p45/212、(NUREG-1853) History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[13] p45/212、(NUREG-1853) History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[14] p45/212、(NUREG-1853) History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[15] コンパクトとは州間協定で周辺の複数の州が協力して体レベル放射性廃棄物を責任を持って処分する枠組み。
[16] History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State, p.23
[17] p45/212、(NUREG-1853) History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[18] 平成30年度 廃止措置等を踏まえた国際シンポジウム 使用資料, p.2
[19] p31/212、NUREG-1853 History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United States、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[20] p29-30/212、NUREG-1853 History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United States、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[21] History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United State, p.16
[22] Commercial Low-Level Radioactive Waste Disposal In South Carolina p.2
[23] p39/212、NUREG-1853 History and Framework of Commercial Low-Level Radioactive Waste Management in the United States、
https://www.nrc.gov/docs/ML0706/ML070600684.pdf
[24] p13/20、NEI 16-11 (Rev 1)、https://www.nrc.gov/docs/ML1634/ML16348A396.pdf
[25] NRC (2019) “§ 50.75 Reporting and recordkeeping for decommissioning planning,” December 30, 2019, https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part050/part050-0075.html
[26] 10 CFR 50.75 (e) (1) (i)「前払いとは、運転開始または§50.80に基づく免許の移転に先立ち、ライセンシーの資産から分離され、ライセンシーおよびその子会社または関連会社の管理統制外にある現金または流動資産の口座に、運転の永久終了が見込まれる時点で資金額が廃炉費用を支払うのに十分であるよう入金することである。予納は、信託、エスクロー口座、または政府基金による支払い、預金証書、政府証券またはその他の証券の預託、またはNRCが認めるその他の方法の形態とすることができます。」「本節 50.75(b)(1) に基づくサイト固有の推定に基づき資金を前払したライセンシーは、サイト固有の推定が推定に明確に記載された安全貯蔵期間に基づいている場合、将来の資金回収時点から予測廃棄期間を通じて最大 2%の年間実質収益率を用いて、前払した廃炉信託資金の予測収益を控除することができる。
[27] 10 CFR 50.75 (e) (1) (ii)「External sinking fundとは、ライセンシーの資産から分離され、ライセンシー及びその子会社または関連会社の管理支配下にない口座に定期的に資金を積み立てることによって設立・維持される基金で、その総額は、事業の永久終了が見込まれる時点で廃炉費用を支払うのに十分となるものである。
[28] Ratemaking regulationの定義(cost of service regulation)(NCR (2017) “10 CFR 50.2 Definitions,” August 29, 2017)
https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part050/part050-0002.html
サービスコスト規制とは、料金規制当局が電気事業者に対し、顧客に電気サービスを提供する費用(資本、運用、メンテナンス、燃料、廃止措置、及びそのようなサービスを提供するために必要なその他のコスト)を請求することを許可する規制を指す。この規制は、「価格上限」や「インセンティブ」規制を含む、料金規制の従来のシステム、または類似の規制を指す。
[29] Non-bypassable charges定義(NCR (2017) “10 CFR 50.2 Definitions,” August 29, 2017, https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part050/part050-0002.html
Non-bypassable chargesとは、原子力発電所の廃止措置に関連する費用を負担するために、政府当局によって定められた期間において、影響を受ける個人または団体が支払う必要がある料金を指す。 このような料金には、wire charges、stranded cost charges、transition charges、exit fees、その他の類似の料金、またはsecuritized proceeds of a revenue streamが含まれるが、これらだけに限定されることはない。
[30] 10 CFR 50.75 (e) (1) (iii) (a)「(A) これらの方法は、廃炉費用が支払われることを保証するものである。保証の方法は、保証書、または信用状の形態とすることができる。
[31] “Amounts are based on activities related to the definition of “Decommission” in § 50.2 of this part and do not include the cost of removal and disposal of spent fuel or of nonradioactive structures and materials beyond that necessary to terminate the license.” https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part050/part050-0075.html
[32] NRC (2017) “§ 50.82 Termination of license,” August 29, 2017, https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part050/part050-0082.html
[33] NRC (2017) “§ 72.30 Financial assurance and recordkeeping for decommissioning,” August 29, 2017, https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part072/part072-0030.html

5. 我が国における廃止措置に対する提言
(1)廃止措置は各サイトで開始時期をずらしてすすめるべき

 廃炉のプロセスは以下の4ステップで、1基につき約30年をかけて廃炉を完了させる計画となっている。
 設備を解体し、放射性廃棄物が本格的に発生する「第2段階」及び「第3段階」が作業のピークであり、重要なプロセスとなる[34](図3)。

図 3 廃炉の4ステップ
出所:資源エネルギー庁(2022年5月30日)「着実な廃止措置に向けた取組」、原子力小委員会、第27回 資料6

 2022年9月8日現在において、廃炉決定済みの18基のうち周辺設備を解体する第2段階にあるのは4基である(図4)。原子炉等を解体する第3段階は2020年代半ば以降に本格化する見通しであり、現在進められている商業炉では東海、敦賀1、浜岡1,2、加えて実証炉でのふげんの解体が進められている。今回、新認可法人が戦略的に日本全体の廃炉戦略を決めるということなので、主導的なデモンストレーションとなるべき商業的な解体プロジェクトの選定を行った上で、その後のプラントは解体の時間をずらしてその教訓を活かしつつ廃止措置を進めていくのが重要である。

図 4 原子力発電所の廃炉のスケジュール
出所:資源エネルギー庁(2022年5月30日)「着実な廃止措置に向けた取組」、原子力小委員会 第27回 資料6

(2)先ずはL3埋設の設置とクリアランス物の搬出先、そしてL1、L2の埋設の設置を急ぐべき
 廃止措置を円滑に進めるためには、解体で大量に発生するL3の埋設先とクリアランス検認物の搬出先の確保が最優先課題となる。次いで、発生物量が比較的少ないL1,L2埋設先の確保が必要と考える。
 2022年9月3日現在において、L1は処分場なし。また、L2は3号埋設施設までが現在発電中の廃棄物に対応しているが(図5)廃止措置で発生するものは決まっていない。L3は東海で審査中である。早期に事業者より計画的に立地をすすめることと並行して、国もある程度の関与をすべきではないか? クリアランス物については、未だに業界内等での再利用に限定されているため、搬出が進んでいない。関係者で協力して、早期にクリアランス物の限定を解除すべきではないか?
 以上、L1、L2の立地とクリアランス物の扱いは業界全体で対応し、L3は個別社による対応となるが、この部分の規制はそのリスクに合ったものになるようにし、漸次推進すべきである。

図 5 日本原燃の埋設センターの概要

出所:日本原燃Webサイト「埋設事業の概要 」https://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/llw/summary/(2022年9月3日閲覧)、および、日本原燃(2018年5月15日)「六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター 3号廃棄物埋設施設の増設の概要、1号廃棄物埋設施設及び2号廃棄物埋設施設の変更の概要」https://www.jnfl.co.jp/ja/release/press/2018/detail/file/20180515-1-1.pdf

 筆者の米国事業者へのヒアリングでは解体作業も処分場ありきでそのプロジェクトマネージメントのKPI(Key Performance Indicator)が設定されている。図6、図7、図8、図9にあるように処分場での最終形(WAC: Waste Acceptance Criteria)を考えた解体・運搬が行われている。他方我が国では処分場がないため、現時点では廃止措置サイトの中にどのように仮置きしておくかが廃止措置マネージメントの中心となっている。

図6 クライブ処分場
出所:Energy Solutions WebSite https://www.energysolutions.com/clive-disposal-facility/ (2022年9月4日閲覧)

図7 バーンウェル処分場
出所:Energy Solutions WebSite https://www.energysolutions.com/barnwell-disposal-facility/ (2022年9月4日閲覧)

図8 WCS処分場(1)
出所:WCS’s homepage「About WCS, Our Facilities, Facility Site Map」、https://www.wcstexas.com/about/our-facilities/facility-site-map/(2022年9月6日閲覧)

図9 WCS処分場(2)
出所:WCS’s homepage「Our Services」、https://www.wcstexas.com/our-services/(2022年9月6日閲覧)

(3)拠出金制度のあり方
 拠出金としてプールされたあとは、その拠出された先でのその運用も重要であるが、廃炉事業所管の電力会社に一定の要件を負わせるような仕組みづくりが必要である。そのためには信託の活用や、米国のような廃止事業とのSPC/組合にする方式も再考する必要があるのではないか。


[34] 資源エネルギー庁(2022年5月30日)「着実な廃止措置に向けた取組」、原子力小委員会、第27回 資料6

6. まとめ
 米国と日本の廃止措置の違いをまとめると表9のようになる。廃止措置完了実績のある米国との最大の違いは、
1)廃止措置実施主体のあり方:今後は米国のような廃止措置専門会社によるスピーディな廃炉の展開もあり得る。
2)解体計画:なるべく廃棄物を最少にするマネジメントも重要である(米国において処分場が十分なかったときの主な対応)。
3)プロジェクト管理:米国との比較では、日本においては(通常の建設現場で行われているような)早めの納期を設定し、細かいコスト管理、下請管理、それに合わせた成果・人事評価をとり入れていく必要があるようである。また、可能な限り安価で簡単な技術装置に置き換えていく。
4)処分場の有無:廃止措置の段取りなどの作業効率は処分場の存在により大きく左右されることになる。
5)廃止措置に関心を持つ住民への丁寧な説明:国の方針と合わせた早期廃炉のメリットを説明するなど、廃止措置に積極的な自治体へのより強いインセンティブの付与などである。

表 9 日米における廃止措置の現状比較
出所:各種資料より、京都大学長山作成

 廃止措置の事業は、新認可法人から設置許可者に委託することになる。この場合、現行の法規制では電気事業者自らによって廃止措置を行うことになるが、米国の例でみたモデル2、3、4のいずれも現行規制では対応が難しく、迅速な廃止措置のためには今後の法律・規制の変更が求められる(図10)。

図10 新規認可法人における廃止措置義務の全体像
出所:資源エネルギー庁(2022年7月27日)「円滑かつ着実な廃止措置の実現に向けた政策の方向性」、廃炉等円滑化ワーキンググループ、第1回 資料5 を参考に作成

 また、新認可法人の役割分担や業務内容については、既存の使用済燃料再処理機構(NuRO)と原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の前例を参考に、法律、政令、省令、新機構の定款、新機構の業務方法書等の階層構造を理解しつつ、国との役割分担を考えて議論されるべきであろう(表10)。

表10 使用済燃料再処理機構(NuRO)と原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)


謝辞
 本研究は、(公益財団法人)トラスト未来フォーラム財団の研究支援を得ている。この場を借りてお礼申し上げる。

参考文献
・資源エネルギー庁(2022年7月22日)第1回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 廃炉等円滑化ワーキンググループ、各資料、
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/hairo_wg/001.html

・資源エネルギー庁(2022年8月31日)第2回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 廃炉等円滑化ワーキンググループ、各資料、
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/hairo_wg/002.html